2017年04月22日

立ち退き要求が認められる場合とは① 【賃貸借】【立ち退き】【明け渡し】

1,はじめに

 賃借人に賃料不払いなどの契約違反がない場合でも、賃貸人自身がその建物に住みたいとか、老朽化により建物を建て替えたいなど、賃貸人側の都合により、建物の立退きを求めたい場合があります。しかし、借家契約を締結している賃貸人が賃借人に対し、更新拒絶や解約申入れをしたいとしても、容易には認められません。なぜなら、借家契約の更新拒絶や解約申入れをするには、期間満了の6ヶ月前までの通知などの手続的要件のほか、「正当事由」が必要であるからです(借地借家法28条)

 そこで、今回のブログでは、どのような場合であれば「正当事由」が認められるか解説していきたいと思います。

 なお、普通建物賃貸借契約ではなく、定期建物賃貸借契約(借地借家法38条)の場合は、正当事由制度の適用はないので、期間満了半年前までに契約終了の通知さえしておけば、契約期間が満了するとともに、正当事由がなくとも契約が終了します。つまり、今回のブログで扱う「正当事由」のお話は、普通建物賃貸借契約の場合のものです。

2,正当事由とは何か

 正当事由の考慮要素は、ア 建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情、イ 建物の賃貸借に関する従前の経過、ウ 建物の利用状況、エ 建物の現況、オ 賃貸人が賃借人に対して提供する立退料・代替建物の5つです(借地借家法28条1項)。

3,正当事由の5要素の優劣

 これらの5つの要素の中で最重要視されるのは、ア の建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情です。その他の4つの事情は補充的要素ということになります。オの立退料の支払いは、その中でもさらに一段低く見られるものであり、アからエの事情が全くない場合には、立退料の支払いだけでは、正当事由は認められないということになります。

 今回のブログでは、最重要視されるアについて、少し詳しく見ていきたいと思います。

4.物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情について

(1)賃貸人側の事情

ア 賃貸人自身が使用する場合

 賃貸人がその建物を自分で利用する場合、たとえば賃貸人自身が住居として住むとか、営業のためにその建物を使いたいとか、周辺の土地と一緒に開発して高度利用を図りたいといった事情がある場合には、正当事由は必ず認められるのでしょうか。

 これについては、結論から言うと、必ずしもそうではないということになります。たとえば、賃貸人自身が駅に近いからその物件に住みたいと言っても、賃貸人が他にも近隣に空物件を所有しており、そこを使用するのでも若干駅から遠くなるものの特に問題がないという場合は、わざわざ賃借人を立ち退かせる必要はないという判断がなされる可能性が高いです。また、賃貸人側に使用したい事情があっても、それを上回る賃借人側の差し迫った事情がある場合もあります(もっとも、必ずしも賃貸人側の必要性が賃借人側の必要性より上回る必要性があるというわけではなく、その他の4要素もあわせた総合判断となります)。

 なお、賃貸人自身ではなく、賃貸人の孫など身内の者に使用を必要とする事情がある場合は、賃貸人自身の場合に準ずるものとして、考慮事由とされます(東京地裁平成3年7月25日判決等)。

イ 賃貸人に税金や借入金の支払いなどのために売却する必要がある場合

 賃貸人に税金や借入金の支払いなどのためにその建物を売却する必要がある場合も、正当事由が認められることがあります(東京高裁平成12年12月14日など)。同高裁判例では、建物に借家人がいるままでは正当な目的で建物と借地権を買い受けようとする者は現れないと予想されるため、建物明渡しの必要性と合理性があるとされました。これに対し、その建物を売却しなくても直ちに経営が危機にひんするとは認めがたいとして正当事由を認めなかった事例もあります(東京地裁平成21年1月28日)。
 
(2)賃借人側の事情

 住居や店舗として使用している場合、現実に使用しているわけですから、必要性は明らかに認められるようにも思えます。
 確かに、長期間にわたってその建物に居住し、年齢面や収入面、健康面といった点から、その建物を立ち退くことになると、生活の基盤を失うことになるといった場合は、その建物を使用する高度の必要性が認められることになります。

 しかし、住居として使用しているといっても、残業の際に寝泊まりする程度の利用である場合などは必要性が低いとされるでしょうし、単身で住んでいる場合などには、他の物件に転居してもほとんど影響がないという判断がなされることも多々あります。また、店舗や事務所として使用している場合でも、特に地元に根差した商売を行っているなどといった事情がなければ、その物件でなければならない理由はないということになります。この場合、代替物件として同条件の建物を提示したりすれば、特に立退きが認められやすくなります。

 なお、賃借人の事情は個々人によって異なりますので、アパート等の共同住宅であっても、立退きの正当事由が認められる賃借人、認められない賃借人と分かれることもありうるということになります。

5.おわりに

 今回のブログでは、賃貸人が賃借人に対して立退きを求める場合に必要とされる「正当事由」について、ア 建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情について解説させていただきました。

 次回は、その他の4つの要素についても詳しく見ていきたいと思います。

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