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2021.05.27
離婚・男女問題

【解決事例】親権を獲得し,連帯債務の住宅ローンの負担を免れ,調停離婚が成立した事例

【ご相談の概要】

お互い離婚することで話がまとまり、離婚届も書いていたが、相手方の気が変わったようで離婚届不受理の申請がなされていた。親権、養育費、オーバーローンとなる自宅の負債についてどう返済していくかについて話が進まなくなってしまった。親権を取得した場合、面会交流は月1回程度にしてほしいが、相手は月2回、宿泊つきを希望している。親権は自身が取得し、養育費は適正な額をもらいつつ、面会は月1回にしたい。離婚するまでの婚姻費用も支払ってほしい。

【受任後の対応】

婚姻費用、離婚の交渉及び調停の代理人として受任し、受任通知を発送して交渉を開始した。相手方は、「離婚は構わないが、親権は自身で取得したい。家については連帯債務なのでそちらにも債務を負担してほしい。住宅ローンを支払うと婚姻費用を払うのは難しい。」と返答したので、婚姻費用調停、離婚調停を申し立てることとした。

調停移行後、相手方も代理人を就けたので、双方代理人を通じて妥協点を探っていくこととなった。

争点となったのは、婚姻費用、養育費、自宅を売却するか存続させるかの3点であった。

当方は、婚姻費用、養育費は適切に支払ってほしい、自宅は売却するにせよ、相手方が住み続けるにせよ住宅ローンは相手方が負担してほしいと主張した。

相手方は、収入減により、住宅ローンを支払うと婚姻費用を支払えないので、住宅ローンを全額負担する代わりに婚姻費用、養育費は免除してほしいと主張した。

【結果】

調停により合意に至った。内容は、①親権者は申立人母、②自宅はローン完済時に申立人持分を財産分与として移転する、③住宅ローンは相手方において責任を持って支払う、④申立人は相手方に対し養育費を請求しないというものである。

【弁護士のコメント】

離婚届不受理の申し出をしている場合、申出人が離婚届を提出するか、申出人が不受理申し出を取り下げない限り、離婚届を提出することができなくなります。このような場合には、申出人と協議して離婚条件を詰めるほかなくなってしまいます。そのため、当事者間で離婚の話を進めようとする場合、申出人に譲歩しないと離婚が難しくなる状況となってしまう可能性があります。不利な条件で離婚することを避けるためには、弁護士に依頼して交渉していくことをお勧めします。

自宅不動産がオーバーローンとなる場合、自宅不動産のローン債務者がローンを引き受けることとなります。法律上はそうであるとしても、離婚後に居住しない自宅のローンを引き受けることは心理的に受け入れがたい点があるものと思われます。離婚後も相手が住み続けるというのであればなおさらそう感じてしまうでしょう。そこで、本件では、相手方が住宅ローンを責任を持って支払うことを確約するかわりに、婚姻費用の請求を取り下げ、申立人からは養育費の請求をしない形で合意をすることとしました。申立人が養育費を請求しないとしても、お子さま自身から扶養料の請求は可能ですので、将来的にお子さま自身が請求できる余地を残して離婚を成立させるに至りました。

当事者間の信頼関係を基礎とする合意内容とはなりますが、相手方も自身の住まいをなくすわけにはいきませんから、合意を守ることが十分に期待できるものと考えられます。

ご自身の不利益を最小限にして、離婚を成立させたいとお考えになる場合には、弁護士をつけて交渉をしていくのがよいでしょう。