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認知したらどうなるの?認知の効果について弁護士が解説します。
1,はじめに
「認知してほしいと言われましたが,認知したらどうなるんでしょう?
その女性との結婚は考えていません・・・。」
「交際していた男性との間に子どもができ,生みたいのですが,認知してもらえるでしょうか」
弊所では男女問題に注力しているため,以上のような相談がしばしばあります。
2,認知とは?
認知とは,結婚していない男女との間に生まれる(生まれた)子について,「自分の子である」と認めることをいいます。
認知すると,法律上の親子関係が発生します。
3,認知したらどうなる?
- 戸籍に載る
父の戸籍に認知した事実が記録されます。
そのため,既婚男性が奥さん以外の女性との間で子をもうけた場合,戸籍をみれば不貞が明らかとなります。
- 戸籍の載り方
<結婚していない父Aと母Bの間に子Cが生まれた場合を想定>
結婚していない男女の間に生まれた子を「非嫡出子」といいます。
非嫡出子は,母の戸籍に入るため,母の戸籍において「戸籍に記載されている者」として子が記載されます。
認知しても,子は父の戸籍に入るわけではないので,父の戸籍の「戸籍に記載されている者」の欄に,子Cは記載されませんが,「身分事項」の欄に認知した事実が記載されます。
母Bの戸籍(未認知)
戸籍に記載されている者 |
【名】C 【生年月日】○年○月○日 【父】(空欄) 【母】B 【続柄】長男 |
↓
母Bの戸籍(認知後)
戸籍に記載されている者 |
【名】C 【生年月日】○年○月○日 【父】A 【母】B 【続柄】長男 |
身分事項
出生
認知 |
【出生日】○年○月○日 【届出日】○年○月○日 【出生地】○○県○○市 【届出人】母 |
【認知日】○年○月○日
【認知者の氏名】A 【認知者の戸籍】神奈川県横浜市○町○丁目○番地 A |
父Aの戸籍(認知後)
身分事項
出生
認知 |
【出生日】(空欄)
【届出日】(空欄) 【出生地】(空欄) 【届出人】(空欄) |
【認知日】○年○月○日
【認知した子の氏名】C 【認知した子の戸籍】神奈川県横浜市△町△丁目△番地 B |
- 転籍すれば認知の事実は新しい戸籍に載らない
パスポート取得のために戸籍謄本を取り寄せた場合など,家族に戸籍を見られて,認知したことが発覚してしまうのは避けたい・・・と考える方もいらっしゃるでしょう。
戸籍謄本の閲覧から,認知の事実が発覚しない方法として,本籍地を移転(転籍)することが挙げられます。転籍すると,転籍前の戸籍に記載された認知の事実は新しい戸籍には記載されないのです(ただし,従前の戸籍を見れば、認知の事実は分かります)。
- 認知した子に養育費を支払う義務が生じる
親子間には扶養義務(民法877条1項)が発生するので,養育費を支払う義務が生じます。
- 認知した子が相続人になる
子は,父の相続人となります(民法877条1項)。
相続手続きにおいては,出生から死亡までの戸籍が必要となるため,転籍していても,死亡後には認知の事実が明らかとなります。
奥さんや,奥さんとの間に子がいる場合,相続において紛争が生じる可能性があるため,紛争とならないように遺言書を作成されておいた方がよいでしょう。
4,認知の方法は?
認知の方法には,「任意認知」と「強制認知」の方法があります。
- 任意認知
「任意」という言葉のとおり,自らの意思で認知することをいいます。
任意認知の方法は,「届出」と「遺言」の二通りあります。
- 届出
認知をする人(父)が生存中に行う方法で,役所にある届出用紙に必要事項を記入・押印します。
<子が生まれる前>
届出場所:母の本籍地の市町村役場に届出
必要書類:父の戸籍謄本,子の母の承諾書
<子が生まれた後>
届出場所:父または子の本籍地の市町村役場 or 届出人の所在地の市町村役場
必要書類:父と子の戸籍謄本各1通(本籍地以外で認知届を提出する場合)
(子が成人している場合,子の承諾書)
- 遺言
遺言執行者(相続人全員の代理人として,遺言内容を実現するため必要な手続きをする人)認知届を提出すると,遺言者(父)の死亡時に認知の効力が発生します。
遺言認知をするときは、遺言執行者を定めておく必要があります。遺言執行者が定められていない場合は、相続人が家庭裁判所で遺言執行者選任の手続きをする必要があります。
<子が生まれる前>
届出場所:母の本籍地の市町村役場に届出
必要書類:遺言書の謄本,子の母の承諾書
<子が生まれた後>
届出場所:父または子の本籍地の市町村役場 or 遺言執行者の住所地の市町村役場
必要書類:遺言書の謄本
(子が成人している場合,子の承諾書)
- 強制認知
父が任意認知をしないまたはできないときに,母や子が家庭裁判所の手続により,強制的に認知させることをいいます。
<強制認知の手続>
離婚と同じようにいきなり訴訟提起をすることはできないので,まずは調停を申立てられることになります(家事事件手続法257条,調停前置主義)。
調停において子であることを認めて合意に至った場合,家庭裁判所が必要な事実の調査(実務的にはDNA鑑定がなされることが多いです)を行ったうえで,審判をします。
調停において子であることを否定し,合意に至らなかった場合,調停不成立となり手続は終了します。自動的に審判に移行するわけではなく,母や子が訴訟提起をする必要があります。
なお,認知の申立てと同時に,養育費の請求がなされることが多いです。
<審判や訴訟で認知された場合の届出 >
届出場所:父または子の本籍地の市町村役場 or 父の所在地の市町村役場
必要書類:認知を認めた裁判の謄本とその裁判が確定したことを示す確定証明書
父と子の戸籍謄本各1通(本籍地以外で認知届を提出する場合)
5,まとめ
認知すると,①認知の事実が戸籍に載る,②扶養義務が発生する,③認知した子が相続人となります。
認知についてお困りの際には,一度,弁護士に相談されるとよいでしょう。