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2020.11.26
ペット関連

【ペットに関するお仕事をしている方必見】動物愛護法をペット弁護士が解説しました

ペットに関する法律って何がありますか?と聞かれてパッと答えられる人はなかなかいないでしょう。

私も弁護士になって,ペット法務を扱うようになって初めて知りました。

ペットに関する仕事に携わる方は,ペットに関する法律を知っておいて損はありません。思いついた会心のビジネスアイデアが実は法律でNGだったり,問題ないと思ってやっていたことが実は法律上禁じられていたり・・。

ざっくりでも法律を知っておくことで,思わぬトラブルを回避できるでしょう。

本記事では,ペットに関わるお仕事をしている皆様なら知っておいた方がいい,動物に関する基本的な法律,動物愛護法を解説していきます。

なお,本記事では,第1種動物取扱業者,特に犬猫販売業者に関する規制を中心に説明しています。

1 動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)の目的

法律の第1条は,大体決まって,その法律の目的,2条は基本原則が書いてあります。

動物愛護法の1条を見ると,

「国民の間に動物を愛護する気風を招来し,生命尊重,友愛及び平和の情操の涵養に資すること」「動物による人の生命,身体及び財産に対する侵害を防止すること」・・云々ありますが,

2012年の改正で「人と動物の強制する社会の実現」が最終目的であると明記されました。

つまり,動物愛護法は人間だけでなく動物のための法律でもある,ということが改正によって明らかになりました。

次に2条を見ると,1項で

「動物が命あるものであることを考慮して,みだりに動物を虐待しないこと,人間と動物が共に生きていける社会をめざし,動物の習性を知ったうえで適正に取り扱うようにしなければいけない」

さらに2項では,「適切な給餌及び給水」「必要な健康管理」「飼養又は保管を行うための環境の確保」を行わなければならない

と定められています。

特に2項は,国際的な動物福祉の原則である「5つの自由」のうち①飢えと渇きからの自由,②肉体的苦痛と不快からの自由,③外傷や疾病からの自由,④正常な行動を表現する自由,の趣旨が明記されたもの,と言われています(詳細は割愛)。

このような書きぶりからも,動物愛護法が動物のための法律であるということがわかりますね。

2 動物愛護法の対象動物

法律上明記はされていませんが,飼養動物全般と考えられます。代表例としては,

①家庭動物:ペット

②展示動物:動物園の動物やいわゆるタレント犬など

③実験動物:モルモット等

④産業動物:乳牛等

です(詳細割愛)。

3 動物取扱業者の登録

⑴ 登録・動物取扱責任者

ペットショップなどの動物取扱業者は,都道府県知事等の登録を受け

さらに,事業者ごとに1名以上の常勤の動物取扱責任者をおかないと営業ができません。

※令和元年改正により動物取扱責任者は「十分な技術的能力及び専門的な知識経験を有する者」でなければならない,とされました。

 

⑵ 動物取扱業者

第1種動物取扱業者と,第2種動物取扱業者に分けられています。

第1種動物取扱業者:動物の販売,保管,貸出,訓練,展示,競りあっせん,譲受飼養を,営利目的で業として行う者(10条,施行令1条)

第2種動物取扱業者:動物の譲渡,保管,貸出,訓練,展示を非営利で業として行う者(24条の2)

ペットショップやペットホテルなど営利性を持つ事業を行う方は第1種動物取扱業者です。さらに犬猫等を販売する業者は,追加の義務が課されます。

登録手続の詳細を知りたい,申請書の書式を希望の方は,環境省HPをご参照ください(環境省_第一種動物取扱業者の規制 [動物の愛護と適切な管理] (env.go.jp)

 

4 第1種動物取扱業者(犬猫販売業者)の責務

ここでは,数が多い,犬猫販売業者の特則について説明します。第2種動物取扱業者についての説明は,本記事では省略します。

⑴ 登録時

犬猫を販売しようとする者は,①犬猫の繁殖を行うかどうか,②犬猫等健康安全計画,を第1種動物取扱業者としての申請書に記載する必要があります(10条3項)。

⑵ 登録後

ア 飼養施設の構造。規模・管理方法,動物の飼養及び保管の方法について動物愛護法の定める基準を遵守しなければなりません(21条1項)

犬猫販売業者の場合は,この基準がより具体的に定められています(21条3項,施行規則8条)。

例えば,

・店頭の展示は,午前8時から午後8時の間に行うこと

・販売時に当該動物の飼育方法や特性や状態に関して文書を交付して説明すること

・上記説明の実施状況の帳簿を作り,5年間保管すること

等々。

 イ 販売に関しての情報提供

お客様に,その動物の現在の状況を直接みせ,その事業所において,対面かつ書面等を用いて,その動物の飼養・保管の方法など必要な情報を提供しなければなりません(21条4項)。

つまり,現物確認と対面説明,しかも説明は文書でしなければ動物を売ってはいけない,ということです。これは,インターネット販売でも同様です。インターネット上「だけ」では犬猫等を販売・購入することはできません。

必ず,現物確認と対面での説明が必要です。

さらに,説明をする者は,店員ならだれでもよいわけではなく,①半年以上の実務経験,②営もうとする種別に関する知識や技術について,1年間以上教育する専門学校等を卒業している,③専門性を持った団体が行う試験によって第1種動物取扱業者の知識及び技術を習得している証明を得ている者でなければなりません。

つまり,対面説明をする店員は,半年以上その店で勤務しているか,動物専門学校等を卒業しているか,愛玩動物飼養管理士(1級,2級)等の試験に合格している人,でなければなりません。

説明をしなければらない事項は品種から,ごはんのあげ方,標準体重,ワクチン接種状況など計18項目あります(施行規則8条の2第2項)。詳細はこちら⇒環境省_対面説明が必要な18項目[動物の愛護と適切な管理] (env.go.jp)

環境省の「ペット動物販売業者用説明マニュアル(哺乳類・鳥類・爬虫類) (env.go.jp)も確認しておきましょう。

 ウ いわゆる8週齢規制

出生後56日(8週)を経過していない犬猫の販売や販売するための展示や引き渡しはできません(22条の5)

※秋田県など一部犬種は除く。

 エ マイクロチップ装着及び情報登録義務

犬猫販売業者は,当該犬猫を取得したときから30日以内に,当該犬猫にマイクロチップを装着しなければなりません。

また,マイクロチップ装着証明書を獣医師に発行してもらい,環境大臣に提出しなければなりません。

さらに,当該犬猫を販売した際は,変更登録をしなければなりません。

 

⑷ その他

各種規制に違反した場合の罰則,第2種動物取扱業者の責務等,詳しく知りたい方は環境省のHPを参考にされてみてください。

 

5 まとめ

以上,犬猫販売業者の守るべき内容を中心にまとめてみました。ペットに関する法律は,動物愛護法だけではなく,ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律),狂犬病予防法その他各都道府県の条例など数多くあります。

これからペットビジネスを始めようと思っている方,今まで気にしなかったけど読んでみたら自分の店大丈夫かな?と不安になってきたという方は,お気軽にお問い合わせくださいませ。

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