2017年04月29日

立ち退き要求が認められる場合とは② 【賃貸借】【立ち退き】【明け渡し】

1,はじめに
 前回のブログでは,賃借人に立ち退きを求める際の「正当事由」についてお話させていただきました。
 前回のおさらいとなりますが,正当事由の考慮要素は、㋐建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情、㋑建物の賃貸借に関する従前の経過、㋒建物の利用状況、㋓建物の現況、㋔賃貸人が賃借人に対して提供する立退料・代替建物の5つです(借地借家法28条1項)。
そして,これらの5つの要素の中で最重要視されるのは、㋐「建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情」ですが,その具体的内容については前回のブログで解説させていただきました。
今日は,その他の4つの考慮要素についてお話しさせていただきます。

「㋑建物の賃貸借に関する従前の経過」について

 「建物の賃貸借に関する従前の経過」とは,様々な事情を含むもので,たとえば,契約締結に至った事情,その後の事情の変化,家賃の金額(近隣同種の建物の家賃相場と比べて高いか安いか),家賃の改定状況,敷金・保証金・礼金などの支払いの有無,家賃の支払状況やその他の契約違反の有無,契約期間の長さなどがあげられます。

 契約締結に至った事情が変化したために,立ち退きを認めた事例としては,たとえば,姉が弟に両親の面倒を見てくれることを前提として低額な賃料で建物を貸した場合に,その後家族の関係が悪化したことや,弟が他にマンションを所有していたことを理由として,立ち退きが認められたものがあります(東京地裁平成18年8月30日)。

 家賃の金額に関する事例としては,家賃が近隣の同種建物と比較して安く,また契約締結以来増額されてこなかったという経過が考慮事由の1つとされ,立ち退きが認められたものがあります(東京地裁平成29年7月18日)。

 契約期間については,長期間居住を続けていることが重視された事例があります(東京地裁平成20年4月23日)。しかし,当該建物を借りる目的を達成するのに必要な期間が経過したことを理由に正当事由が肯定されるということもありますので一概にはいえません。

 
3,「㋒建物の利用状況」について

 共同住宅や商業施設などにおいて,立ち退きを求められている賃借人以外の大部分の部屋が空室となっている(他の賃借人が退去済みである)ことが,正当事由の大きな要素と判断されることがあります(東京地裁平成19年2月2日など)。

4,「㋓建物の現況」について
 建物の現況とは,建物の老朽化の程度や耐震性をはじめとする危険性の程度のことをいいます。

建物が建てられて何年たっているかということだけでなく,建物の強固や,修繕の可否,必要性,修繕に係る費用などが問題となります。

また,近年,東日本大震災の影響もあり,裁判所の判断において,耐震性が重視される傾向にあります。平成18年1月25日国土交通省告示184号において各階の構造体新指標(IS値)が0.6未満の場合は地震の振動及び衝撃に対して倒壊,またはその危険性がある,0.3未満の場合は地震の振動及び衝撃に対して倒壊,またはその危険性が高い,とされており,裁判所もIS値の有用性を認め,正当事由の判断要素としております。

5,「㋔賃貸人が賃借人に対して提供する立退料・代替建物」について

 立退料とは,賃貸人が解約を申入れるのに際し,賃借人が建物の明渡しによりこうむる移転費用その他の損失を補償するものをいい,移転経費,借家権価格,営業補償などを考慮して金額が決められております(※借家権価格とは,地価の高騰等に伴う建物の資産価値の増加分について,賃借人に配分されるべきものをいいます。資産価値の増加には賃借人の貢献もあるという発想が根底にあります。)。

もっとも,立退料の金額は,明渡しによって賃借人のこうむる損失の全部を補償するに足りるものである必要はなく,また立退料として受領した金銭がどのような使途に供され,いかにして損失を補償することができるのかを具体的に明示しなければならないものではないとされています(最高裁判所昭和46年6月17日,最高裁判所昭和46年11月25日)。

 そして,立退料は,それのみで正当事由の根拠となるものではなく,その他の事情とあわせて総合考慮する際に,正当事由を補完するものにすぎないものとされています(同最高裁判例)。ゆえに,立退料の金額は,その他の事情を考慮の上で決定されるということになります。たとえば,契約違反行為が続いたといった事情があれば,そういった事情がない場合に比べ,立退料は減額されるということになるのです。

6,おわりに

 一般に,立退きを求めて裁判を提起しても,裁判所は簡単には正当事由を認めないし,認めるとしても莫大な立退料を要求されるとのイメージがあるようです。

 しかしながら,裁判所の判例をみてみると,想像以上に正当事由を広く認めております。

 ただ,賃貸人自身が立ち退き交渉を行うと,なかなかうまくいかない場合が多いようです。賃貸人が賃借人に対して今まで使用させてあげていたのに高額な立退料を請求するなんて恩知らずだという気持ちになるのに対して,賃借人は日ごろから賃貸人に対して不満を積み重ねていることも多く,ずっと使用できると思っていたのに急に上から目線で退去を迫られると,生活の不安からも,反発感が大きくなるのです。そのような2人が直接話をしたら,双方が感情的になり,折り合いがつかないというのは確かに想像にかたくありません。

 かといって,地上げ業者に立ち退き交渉を依頼するなどというのは,弁護士法72条違反となる違法な行為ですので,絶対にしてはなりません。
 立ち退き交渉が難航しそうな場合は,不動産に強い弁護士に依頼することをおすすめいたします。

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