なかま法律事務所では,ご相談・ご依頼頂いた方に,弊所サービスについてアンケートの回答をお願いしております。今回は頂いたアンケート回答につきまして,「お客様の声」という形で掲載させていただきます。 ※個人情報保護の観点から一部表記を変更していることもございます。予めご了承ください。

【実際に頂いた声】

「不安で一杯の中、すごく親身になって相談にのって頂きありがとうございました」 「とても丁寧で分かりやすい説明でしたので安心しましたし、相談に伺って良かったと思います。」 「無料相談でしたが、詳しくどのように対応すれば良いのか丁寧に教えて頂きありがとうございました。」 「困り事、質問に迅速に回答がいただけた。初回の無料相談時にもかかわらず、議事録を頂いたことは驚きとありがたいと感じました。こちらの相談を真摯に聞いていただいたと思い、貴事務所に決めた次第です。」 「沢山ある法律事務所の中で、やっと 安心して相談に乗って貰える法律事務所に出逢えました。説明も分かりやすく、自分が見落としてる部分や、それだと夫の言いなりで不利な立場にあるけれど、それでいいの?と沢山 気づかせてくれる事が多く、本当に相談して良かった!と沈んでいた気持ちも少し光が射し始めた気持ちになり、中間先生にお願いしよう!と決めました。

【集計結果】

相談満足度100%を目指して,今後とも,所員一同研鑽に努めてまいります。    

1 はじめに

監督の選手に対する体罰,パワハラやセクハラ,アスリートのドーピング問題,アスリートやサポーターの人種差別的な言動,賭博,薬物利用,反社会的勢力とのつながり,八百長,不適切発言によるSNS炎上・・。スポーツに関わる人間の不祥事は,枚挙に暇がありません。 JFA(日本サッカー協会)が2019年、地域・都道府県サッカー協会を対象にガバナンスアンケート調査を実施したところ、職員にコンプライアンス教育を行っていた組織は16%、コンプライアンスに関する規定・ルールがある組織は25%、責任者がいる組織は27%にとどまっていたといいます。JFAは「多くの協会がコンプライアンス教育を行っておらず、ルール等も無い状況」と課題を指摘しています。  

2 コンプライアンス=「法令」遵守?

日本では,コンプライアンスを「法令順(遵)守」と訳して理解しているフシがありますが,これは誤解です。コンプライアンスは,法律に違反しなければよい,というわけでは決してありません。 英語の compliance(コンプライアンス)は、「従うこと、追従、応諾,遵奉、遵守」を意味します。日本語では「要求や命令に従うこと。特に、企業が法令や社会規範・企業倫理を守ること。法令遵守」(広辞苑)という意味になります。つまり,法令だけでなく、 社会規範・企業倫理を守る,端的に言えば,「企業・組織に対する社会からの期待に応えること」が正しい「コンプライアンス」の理解と言えます。

3 Jリーグにおけるコンプライアンス推進

JリーグとJクラブは、「ピッチ上のフェアプレー」「ファイナンシャル・フェアプレー」「ソーシャル・フェアプレー」の3つのフェアプレーが、JリーグやJクラブを発展させる基盤となる重要な概念であることに合意し、これを積極的に推進しています。 具体的には、ソーシャル・フェアプレーの浸透には、「全員で」「定期的に」「繰り返し」身につけることが重要として、リーグ全体及び各クラブにおいて、 「ソーシャル・フェアプレーの徹底に関する研修の実施」 「有事に対応する組織体制の構築」 「コンプライアンス オフィサーの選任」 を求めています。 (https://www.jleague.jp/aboutj/3fairplay/social02.html)  

4 なぜコンプライアンスが重要か

クラブの永続的な発展のため コンプライアンス意識の高いクラブは,優秀な選手,ファンの獲得,クラブ価値の向上など長期的に発展することができます。コンプライアンスの順守は、法令を遵守し社会的な責任を果たすべきであるという理念的なものにとどまらず,クラブが永続的に発展をしていくための鍵となるものと言えるでしょう。 ⑵ リスク回避のため コンプライアンス違反、いわゆる「不祥事」は、クラブの社会的信用を損失し、ファンが離れ、最悪、大口スポンサーの撤退もあり得るなど社会的・経済的損失は計り知れません。経済的なリスクを回避するためにもコンプライアンス対策は急務と言えます。

5 コンプライアンス体制構築に必要なアクション・考え方とは

  ⑴ トップが強いメッセージを発信する コンプライアンスに限らず、組織の課題解決には、トップが方針を示すことが重要です。コンプライアンス対策においても、クラブのトップが「コンプライアンスとはなんぞや」を問い、「コンプライアンス違反は断固として許さない」姿勢を、組織の隅々まで浸透させる必要があります。コンプライアンス意識を高め、風通しの良い組織文化づくりを目指しましょう。 ⑵ アスリートにとってコンプライアンスは、進んで学びたいと思うテーマでないと  いうことを心得る 誤解を恐れずに言えば,アスリートの多くは,「勉強が嫌い」です。なので,クラブがアスリートの学ぶ場を設けなければいけません。また,アスリートが学ぶ意義を見出せるような研修を行わなければいけません。弁護士やコンサルタント等の外部専門家による研修を継続的に実施するなど,選手一人一人の意識改革を促し,コンプライアンス意識が定着するまで時間と労力をかけなければならないのです。 ⑶ 社会の「潮目を読む」力を一人一人に植え付ける コンプライアンスとは,「社会からの要請に応えること」である,と冒頭で申し上げましたが,社会が変化すれば,応えるべき要請も変化します。スポーツ団体は,村社会的な性質が強いことがあり,「業界のオキテ」が幅を利かせていることも少なくありません。組織が閉鎖的であればあるほど社会常識と組織の常識は乖離していきます。スポーツ団体が社会の変化に適応せず,閉鎖的な「業界のオキテ」の基に運営され,団体の価値観と社会の要請が乖離し,この乖離が表面化した時,不祥事が起こります。スポーツ団体のトップやクラブの監督からアスリート一人一人が,社会の変化を感じ取る力が求められています。  

6 コンプライアンス対策を弁護士に依頼するメリット

⑴  クラブに潜むリスクを事前に把握できる 法律の専門家である弁護士がクラブのコンプライアンスリスクをいち早く察知し、対策を提案することができます。 ⑵  コンプライアンス専門部署の設置・教育の効率化 一部のビッグクラブを除いて、コンプライアンス対策にクラブ職員のリソースを充てることは容易ではありません。コンプライアンス対策を外部の弁護士に任せることでコストカットを実現しつつコンプライアンス 力を高めることが可能です。 ⑶  内部通報窓口の外注化によるコストカット 内部通報窓口とは、例えば選手が監督からパワハラを受けた場合、いわゆる告げ口を恐れ、チームメイト、コーチ、クラブスタッフといった内部の人間には相談しにくいものです。外部の相談窓口を設置することで、選手が相談しやすい仕組みを構築できます。内部で相談窓口を設置する場合の人件費も削減できます。 ⑷  外部の視点を取り入れることで,社会要請の変化をキャッチできる コンプライアンス とは、「社会の要請に応えること」を意味しますから、今クラブに求められている社会要請は何か、社会の変化をタイムリーにキャッチアップしなければなりません。弁護士にコンプライアンス対策を依頼することで、社会要請の変化に応じた適切なコンプライアンス体制を構築することが可能です。

7 サービス内容

 月額1万円(税別)から、ご要望に応じたコンプライアンス向上プランをご提案いたします。 ・諸規定類の整備を含めたコンプライアンス体制の整備 5万円〜 ・公益通報外部窓口 月額1万1000円(税込) ・選手の相談窓口対応 月額1万1000円(税込) ・スタッフ及び選手向けのコンプライアンス研修 11万円(税込)〜 ・第三者委員会として不祥事や不正に対する調査 応相談 ・弁護士が社外役員(社外取締役や社外監査役等)として関与 応相談   コンプライアンス体制の構築に取り組みたい 選手にコンプライアンス意識を持たせたい 外部の専門家にコンプライアンス研修を依頼したい などのご要望は、ぜひ弊所にお任せください。 各クラブ・団体様のご担当者様からのお問い合わせは、フォームから受け付けております。     コロナ禍のテレワーク推進の流れも受けて、一般企業においてDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが急速に進んでいます。 他方、法曹業界は、裁判所との紙ベースのやりとりが多く、最早過去の遺物と言っても過言ではないFAXをいまだに日常的に利用せざるを得ないなど、アナログ文化が根強く残っています。 しかしながら、クライアントの利便性を追求するのであれば、DX化への取り組みは喫緊の課題と言えます。 なかま法律事務所では、生産性及びクライアントサービス付加価値向上のため、DX化に積極的に取り組んでまいります。 本記事では、現状の事務所におけるDXの取り組みをご紹介させていただきます。

1 デジタルコミュニケーションの推進

事務所公式LINE、チャットワークの活用により、個人法人問わず、クライアントと弁護士が、スピーディかつ気軽にコミュニケーションを取れる仕組みを構築しています。

2 ペーパレス化の徹底

クラウドデータサービスによる事件資料管理、メールFAX、案件管理システム「Almana」の導入により、紙ファイルの利用を廃止し、資源の無駄を削減。紙ファイルの廃止により、重い事件ファイルを持ち運ぶことがなくなり、弁護士の負担も大幅に削減されました。

3 業務効率の「見える化」

案件管理システムの導入により、事件の進捗の記録化と共有、タスク管理と利益相反の確認、案件ごとの売上や処理期間を一覧でタイムリーに把握することが可能になり、業務効率が改善されました。

4 お問い合わせのデジタル化

HPによる積極的な情報発信、お問い合わせシステム「Interviewz」の導入により、チャットでのお問い合わせに誘導。24時間受付可能に。また、時間を取られがちな電話対応が減り、スタッフの負担も軽減できました。

5 クラウドサービス利用による経理事務処理の簡略化

会計クラウドサービス「freee」を設立当初から導入。煩雑な経理事務をオンラインで処理しています。

6 電子契約の導入

電子契約サービス「クラウドサイン」を導入。委任契約も紙ベースではなく、クラウド上で完結。契約書の印刷、署名・押印も不要になりました。

7 AI契約書チェックサービスの導入

AI契約書チェックサービスも積極的に利用しています。スピーディーかつ漏れ無く契約書のチェックが可能です。        ペットショップ,ブリーダーさん,トリマーさんなど生き物を扱うお仕事にはどうしてもトラブルがつきものです。これらのお仕事をされている人であれば,「あ~あるある!」と思うような典型的なトラブルとその解決のために必要な法的知識を,この記事ではご紹介します。

1,ペットショップ・ブリーダー

「購入したペットに病気・障害があることが発覚した」という理由で,買主とトラブルになるケースがあります。 この場合,買主からどのような主張がなされるのでしょうか。

主張①「ペットは返すので,代金を返してほしい」

まず,売買契約を解除または取消す必要があります。 解除・取消ができる主な場合は以下の通りです。 ・債務不履行に基づく解除 「病気・障害のないペットを引き渡す債務」があるのにこれを履行しなかったという債務の不履行があるとして解除するという主張です。 ・消費者契約法に基づく取消し 事業者が,契約締結に際して,重要事項について事実と異なることを告げ,買主がその告げられた内容が事実であると誤認した場合,売買契約を取り消すことができます(消費者契約法4条1項1号)。 動物販売業者には,ペットの病歴等についての情報を提供する義務が課されていること(動物の愛護及び管理に関する法施行規則第8条の2第2項第16号・第17号)からして,病気や障害の有無は「重要事項」となるでしょう。 そのため,ペットに病気・障害があるのにないと告げ,これを信じて買主が購入した場合には,消費者契約法に基づき売買契約が取消されることになるでしょう。 契約が解除または取り消されると,契約がなかった状態に戻すことになるため,代金を返還して,ペットを返してもらうことになります。

主張②「治療費を支払ってほしい」

この主張を法的にいうと,債務不履行に基づく損害賠償請求となります。 「病気・障害のないペットを引き渡す債務」があるのにこれを履行しなかったという債務不履行があり,これが原因でペットに治療費=損害が生じたため,損害賠償請求をするという主張です。  

主張③「購入したペットから以前より飼っている別のペットに感染症が移った。2匹分の治療費を支払ってほしい。」

この主張も債務不履行に基づく損害賠償請求となります。 「病気・障害のないペットを引き渡す債務」があるのにこれを履行しなかったという債務不履行があり,これが原因で2匹分の治療費=損害が生じたため,損害賠償請求をするという主張です。 ペットからペットに感染症が移ったという「因果関係」の有無が重要になります。  

主張④「別の健康なペットを引き渡してほしい」

この主張を法的にいうと,契約不適合責任に基づく追完請求となります。 「病気・障害のないこと」が契約の内容となっているのに,病気・障害があった場合,買主は売主に対し,契約不適合責任として,「代替物の引渡し」=「別の健康なペットの引渡し」を求めることができます(562条1項)。  

主張⑤「代金を減額してほしい」

売主が「履行の追完」(別のペットとの引渡し)に応じない場合,不適合の程度に応じて代金減額請求ができます(民法563条)。   買主の上記①~⑤の主張が認められるかは,ペットの病気や障害が,購入後に生じたものであるか否かが,重要になってくるでしょう。   なお,消費者契約法8条1項は,事業者(ペット販売業者)の債務不履行により消費者(買主)に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項は無効としているため,契約書で「一切責任を負いません」等の特約をしてもこれは無効となるので,気をつけましょう。  

2,トリマー

「仕上がりが思い描いていたものと違う」 「トリミングでペットが怪我をした」 という理由で飼い主とトラブルになるケースがあります。   この場合,飼い主からどのような主張がなされるのでしょうか。  

主張① 「代金を返してほしい(代金は支払わない)」

前提として,トリミングについての契約は,トリミングという仕事の完成を約束するものなので「請負契約」と理解されます。 トリミングを依頼した飼い主には,仕事の完成後,ペットの引き渡しと同時に,報酬を支払う義務があります(民法633条)。 「仕事の完成」とは,トリミングでいえば,契約上予定されていたトリミングの作業が終了すること理解できます。 そのため,トリミングの結果が飼い主の思い描いていたイメージと異なっていたとしても,トリミングの作業工程を終了している以上,報酬の支払を求めることができます。   仕上がりイメージについて写真を示してもらう,聞き取った内容をカルテ等の記録でとっておくといった方法で未然にトラブルを防止しておくのがよいでしょう。  

主張② 「トリミングし直してほしい」

ここでも仕事が完成しているか否かで,再度のトリミングに応じるべきか否か,判断が分かれます。 例えば,「ここまで短くしてください」と写真を示されてサマーカットを頼まれたけれど,実際は写真よりも明らかに長い状態にある場合には,仕事が完成していないと評価されるでしょう。 この場合は,写真のように,再度トリミングを行うべきです。  

主張③ 「トリミングの際に怪我をしたので治療費を払ってほしい」

この主張は法的には以下のように整理できます。 ・債務不履行に基づく損害賠償請求 請負人は,仕事を完成させて,注文者に引渡しをするまで,善良な管理者の注意をもって,物を保存しなければならないという義務(民法400条,善管注意義務)があります。 そのため,トリマーがトリミングの際に,ハサミで誤ってペットを切ってしまったり,トリミング台からの転落により骨折させてしまったりした場合は,善管注意義務違反という債務不履行を理由に治療費を請求できます。 ・不法行為に基づく損害賠償請求 トリマーがトリミングの際に猫の尻尾の一部を切ってしまったケースの裁判例では,トリマーがトリミングを実施する際には,飼主に対して,信義則上,ペットの安全に配慮し,傷つけることのないようにトリミングを行うべき注意義務を負うとされました(東京地裁平成24年7月26日判決)。 この事案では,飼主ら4人の慰謝料として合計10万円,治療費・通院費約2万円の損害賠償が認められました。なお,トリマーの勤務先会社に対しても使用者責任(民法715条,不法行為の一種)が認められました。  

3,まとめ

今回は,ペットの売買やトリミングにおいて発生しがちな法的トラブルについて,ご紹介しました。 飼主の要求は正当なものなのか? 責任の有無を判断するにあたって何がポイントとなってくるのか? そういったお悩みの参考になればと思います。

 

1 獣医師(動物病院)と飼い主の契約関係

動物病院には,毎日,多くの犬猫・飼主さんが訪れます。 法的観点から説明すると,診察にきた飼い主様と獣医師(動物病院)との間には,獣医療契約が成立しています。 獣医療契約,というのは,民法上の準委任契約(民法  )に当たると考えられており,獣医には,獣医療行為に関して,善管注意義務を負っています。 いわゆる獣医療過誤事件,というのは,すべからく,獣医療行為に関して,獣医師の善管注意義務違反があったかどうか,が争点になります。

2 善管注意義務違反の具体的な基準

法的には,獣医師の獣医療に対する一定の水準を念頭に置き,獣医療水準に従っていない場合,過誤(過失)があるとされます。 この点,裁判例(東京高裁平成20年9月26日・判例タイムズ1322号208頁)では,「獣医師は,準委任契約である診療契約に基づき,善良なる管理者としての注意義務を尽くして動物の診療に当たる義務を負担するものである。そして,この注意義務の基準となるべきものは,診療当時のいわゆる臨床獣医学の実践における医療水準である。この医療水準は,診療に当たった獣医師が診療当時有すべき医療上の知見であり,当該獣医師の専門分野,所属する医療機関の性格等の諸事情を考慮して判断されるべきものである。」と述べています。 要するに一般的な水準を満たす診療をしなさい,ということであって,極論,最新の設備をそろえろとか,24時間看護をやれとか,最新の海外の論文に目を通せ,とか要求されているわけではありません。もっとも,臨床獣医学は日々進歩し,「一般に求められる獣医療水準」自体が上がっていくことは目に見えていますから,獣医学を積極的に学び,実践する努力は当然ながら必要でしょう。 また,動物病院の規模によっても判断は変わります。例えば,多くの個人病院はいわゆる1次診療がメインかと思いますが,このような病院では,設備も制限されていますし,2次診療を行っているような大規模の動物病院に比べて,善管注意義務違反を問われる医療水準は低めに設定される,と考えることができるでしょう。

3 実際に動物病院で起きた獣医師が訴えられた裁判例

⑴ 獣医師の説明義務違反により飼い主の自己決定権が侵害されたとして,治療費・慰謝料の請求が認められた裁判例

ゴールデンレトリバー(13歳)の左前腕部(左前足)にあった腫瘍を切除する手術を行ったところ,手術後1カ月半程度で死亡してしまった事案。 「(獣医師の説明義務違反について)・・飼い主は,ペットに如何なる治療を受けさせるかにつき自己決定権を有し,これを獣医師からみれば,飼い主が如何なる治療を選択するかにつき,必要な情報を提供すべき義務があり,説明の範囲は,飼い主がペットに当該治療方法を受けさせるか否かにつき熟慮し,決断することを援助するに足りるものでなければならず,具体的には,当該疾患の診断(病名。病状),実施予定の治療方法の内容,その治療に伴う危険性,他に選択可能な治療方法があればその内容と利害損失,予後などに及ぶ・・とし,本件腫瘍が悪性で術後再発したら断脚しかないことを説明しなかったとして,説明されていれば本件飼い主は,手術を受けさせず保存的な治療をし,術後1か月半で死ぬことはなかった・・・」と述べ,担当獣医師に対し,治療費7万円,慰謝料30万円と弁護士費用の支払いを認めました。(名古屋高裁金沢支部平成17.5.30 判例タイムズ1217号294頁)

⑵ 獣医師が麻酔前後の適切な処置を怠ったとして,慰謝料,葬儀費用の請求が認められた裁判例

チワワ(5歳)歯石除去手術時に,全身麻酔薬「ラピノペット」「ソムノペンチル」を使用。いずれも,呼吸抑制,循環器系抑制等の副作用が発生する恐れがあった。施術時に,全身麻酔薬「ラピノペット」「ソムノペンチル」を使用。前者は,呼吸抑制,循環器系抑制等の副作用,後者も同様の副作用が発生する恐れがあった。歯石除去手術後まもなく,呼吸停止して死亡した。 「・・獣医師は,これらを投与する際は,気道確保,人口換気,酸素吸入の準備をし,異常があれば気管内挿管や適切な治療等の適切な措置をとる準備をしたうえで,投与後,患畜を継続的に監視し,異常があれば適切な措置を迅速に実施する注意義務を負うのが相当である・・本件獣医師Yは,施術前『桜』と『愛』の体重も測定せず,何らの準備もしていなかった・・」として獣医師の注意義務違反と死亡との因果関係を認め,「損害については,・・4年弱家族のように暮らしてきたことから・・」などとして,飼い主に対し,1匹あたり30万円の慰謝料を認めた。(東京地判H24.12.20 ウェストロージャパン) ※麻酔投与自体に注意義務違反を認めたわけではありません。副作用に備える事前準備。投与後の監視,事後の措置を怠ったことに対する過失があったと評価されています。

4 獣医・動物病院側が,医療過誤の予防のために取るべき対応

⑴ 手術前の説明をとにかく丁寧に行う・インフォームドコンセントの徹底

説明義務を尽くすことがまず何より大事です。疾患の内容,治療方法の選択肢の提示とそれぞれの治療法のメリット・デメリット(リスク),かかる費用など,患者さんが安心して獣医に愛犬(猫)を任せられるようにわかりやすく具体的に説明をして,患者と獣医師との間で信頼関係を築きましょう。

⑵ 手術契約書,麻酔同意書(説明書),カルテ,など診療に関する書面を「ちゃんと」作る

獣医師様とお話してみると,手術契約書や同意書の類は,開業直後に,インターネットで拾った,前の病院で使っていたのをなんとなくそのまま使っている,といったレベル。想定されるリスクを把握して最小化できるような弁護士から見て「ちゃんとした」書面を作っているところはまずお目にかかりません。獣医師様,特に院長様は多忙を極め,実際そこまで手が回らない,というのが実際の所かと思いますが,自分で手が回らないことこそ,専門家に依頼することを考えてみていただけたらと思います。弁護士法人なかま法律事務所では,顧問契約いただいた動物病院様を対象に,手術契約書,麻酔同意書など,通常の診療で定型的に使う書面のひな形を提供させて頂いております。ご興味をもっていただけた獣医師様はお気軽にお問い合わせください。

⑶ 診療技術の研鑽,設備の点検といった基本的なことを怠らない

基本的なことですが,獣医療のプロフェッショナルとして,日々研鑽を怠らないことが大事ですよね。来月2021年6月1日から、犬猫8週齢規制を定めた改正動物愛護法が施行されます。 https://news.yahoo.co.jp/articles/6e10134bdf6d430730c13d910f5383c0713b286e   犬猫8週齢規制とは、要するに、生後56日以下の子犬や子猫の販売を原則禁止する規制です。 犬猫に限らず動物の赤ちゃんは、とても可愛いです。よくある、テレビ番組でもタレントさんが、動物の赤ちゃんを抱っこしたり可愛がっているシーン。こういう番組が放映されると、視聴者の中でも、自分も柴犬(例として)の赤ちゃん飼いたい!などと思ってしまうことは無理からぬところでしょう。 出生後間もなければそれだけ可愛い、だとすれば、生まれたらすぐ引き取りたい!と思う人もいるでしょう。 しかし、犬猫はが出生後一定期間親と共に過ごすことは、「社会化」と言って健全な生育のために必要とされています。 出生後早い段階で、親から引き離されてしまうと、 ・人を噛む ・他の犬と仲良くできない ・病気にかかりやすい など、様々な問題行動等を引き起こす、と言われています。 他方、ブリーダー等生体販売業者の立場としては、ちっちゃい子の方が高く売れるし、出荷が遅れてしまうとその分飼育コストがかかるから、ということで、8週齢規制に消極的な生体販売業者も少なからずいらっしゃったようです。 (良心的なブリーダーは、犬猫のことを第一に考えていらっしゃいますから、規制がなくとも、社会化に必要な期間がすぎるまでは、親犬(猫)と一緒に過ごさせてから、販売しています。念のため)。 ブリーダーさん側にも色々意見があろうかと思いますが、8週齢規制が改正法で導入された目的は、悪徳業者の排除が狙いの一つであることは否定できません。 8週齢規制だけで悪徳業者が根絶できるとは到底思えませんが、今回の改正が、不幸な犬猫が一匹でも減るように、動物の環境改善のきっかけになれば良いな、と思います。      【ご相談の概要】 お互い離婚することで話がまとまり、離婚届も書いていたが、相手方の気が変わったようで離婚届不受理の申請がなされていた。親権、養育費、オーバーローンとなる自宅の負債についてどう返済していくかについて話が進まなくなってしまった。親権を取得した場合、面会交流は月1回程度にしてほしいが、相手は月2回、宿泊つきを希望している。親権は自身が取得し、養育費は適正な額をもらいつつ、面会は月1回にしたい。離婚するまでの婚姻費用も支払ってほしい。 【受任後の対応】 婚姻費用、離婚の交渉及び調停の代理人として受任し、受任通知を発送して交渉を開始した。相手方は、「離婚は構わないが、親権は自身で取得したい。家については連帯債務なのでそちらにも債務を負担してほしい。住宅ローンを支払うと婚姻費用を払うのは難しい。」と返答したので、婚姻費用調停、離婚調停を申し立てることとした。 調停移行後、相手方も代理人を就けたので、双方代理人を通じて妥協点を探っていくこととなった。 争点となったのは、婚姻費用、養育費、自宅を売却するか存続させるかの3点であった。 当方は、婚姻費用、養育費は適切に支払ってほしい、自宅は売却するにせよ、相手方が住み続けるにせよ住宅ローンは相手方が負担してほしいと主張した。 相手方は、収入減により、住宅ローンを支払うと婚姻費用を支払えないので、住宅ローンを全額負担する代わりに婚姻費用、養育費は免除してほしいと主張した。 【結果】 調停により合意に至った。内容は、①親権者は申立人母、②自宅はローン完済時に申立人持分を財産分与として移転する、③住宅ローンは相手方において責任を持って支払う、④申立人は相手方に対し養育費を請求しないというものである。 【弁護士のコメント】 離婚届不受理の申し出をしている場合、申出人が離婚届を提出するか、申出人が不受理申し出を取り下げない限り、離婚届を提出することができなくなります。このような場合には、申出人と協議して離婚条件を詰めるほかなくなってしまいます。そのため、当事者間で離婚の話を進めようとする場合、申出人に譲歩しないと離婚が難しくなる状況となってしまう可能性があります。不利な条件で離婚することを避けるためには、弁護士に依頼して交渉していくことをお勧めします。 自宅不動産がオーバーローンとなる場合、自宅不動産のローン債務者がローンを引き受けることとなります。法律上はそうであるとしても、離婚後に居住しない自宅のローンを引き受けることは心理的に受け入れがたい点があるものと思われます。離婚後も相手が住み続けるというのであればなおさらそう感じてしまうでしょう。そこで、本件では、相手方が住宅ローンを責任を持って支払うことを確約するかわりに、婚姻費用の請求を取り下げ、申立人からは養育費の請求をしない形で合意をすることとしました。申立人が養育費を請求しないとしても、お子さま自身から扶養料の請求は可能ですので、将来的にお子さま自身が請求できる余地を残して離婚を成立させるに至りました。 当事者間の信頼関係を基礎とする合意内容とはなりますが、相手方も自身の住まいをなくすわけにはいきませんから、合意を守ることが十分に期待できるものと考えられます。 ご自身の不利益を最小限にして、離婚を成立させたいとお考えになる場合には、弁護士をつけて交渉をしていくのがよいでしょう。みなさま、こんばんは。弁護士の中間です。 最近、犬の断尾・断耳(ドッキング)についての記事が、Yahooニュースで掲載されました。 →記事はこちら うちの愛犬はコーギーですが、断尾はされていません。愛犬を迎える時は、知識がなく、断尾の有無はあまり気にしなかったのですが、たまたまブリーダーさんが断尾をしない方でしたので、ふさふさしっぽのコーギーを我が家に迎え入れることとなりました。 ↓こんな感じ  

1 断尾はなぜやるのか

コーギーで言えば、断尾がなぜ行われるのか、というと、 ・牧羊犬の仕事を行うにあたり、走る際に邪魔にならないようにするためであったり、家畜にしっぽを踏まれたり噛まれたりしないようにするため ・キツネと間違えられて銃で撃たれないようにするため ・衛生上の問題(尻尾に糞便が付着して感染症や皮膚病を起こすのを避けるため) ・狂犬病の予防になる(という迷信) などなど諸説あるようです。

2 具体的にどうやるのか

上記記事によれば、「ブリーダーで行う場合には、尾の根元を輪ゴムやヒモできつく縛り、血行を遮断して、尾を壊死(生きている体の一部を死なせること)させます。壊死した尾は、自然と落下します。」とのこと。 聞くだけでも痛そうです・・。初めて聞いた時は、「なんて可哀想な!」と憤りを感じたことを覚えています。

3 断尾は適法か

直感的に、こんな痛そう・可哀想なことをやるなんて虐待だろう、と思うでしょう。でも、街を歩いていると、尻尾があるコーギーより尻尾のないコーギーの方がよく見ますよね? なぜなんでしょうか。 実際、コーギーの母国(?)イギリスやドイツ、スペインなど、断尾・断耳が禁止されている国は少なくありません。 他方、日本では、動物の愛護及び管理に関する法律(以下、「動物愛護管理法」と言います)において、断尾が明確に禁止されてはいません。   しかし、私個人の見解としては、断尾・段耳は、動物愛護管理法に違反する虐待行為ではないか、と考えています。 ・動物愛護管理法2条 →基本原則として、「動物が命あるものであることに鑑み、何人も動物をみだりに殺し、傷付け、または、苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない」と定めており、現代社会において、断尾及び断耳が、およそ動物の飼育管理上、必要性を欠き、「動物をみだりに」「傷付け」るものに他ならず、動物愛護管理法の基本原則に反するのではないか。 ・動物愛護管理法44条 →「動物をみだりに殺し又は傷付けた者は五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する」と罰則規定がある 確かに、断尾・断耳について明示的に禁止しているわけではありませんが、動物をみだりに傷つける行為に他ならないのではないか、動物虐待ではないか、と考えます。 人のエゴで犬が痛い思いをするようなことはあってはいけません。 次の法改正で、犬種問わず、断尾・断耳行為を明文で禁止する条項を設けて欲しいな、と思っています。      

1,はじめに

「認知してほしいと言われましたが,認知したらどうなるんでしょう? その女性との結婚は考えていません・・・。」 「交際していた男性との間に子どもができ,生みたいのですが,認知してもらえるでしょうか」 弊所では男女問題に注力しているため,以上のような相談がしばしばあります。  

2,認知とは?

認知とは,結婚していない男女との間に生まれる(生まれた)子について,「自分の子である」と認めることをいいます。 認知すると,法律上の親子関係が発生します。  

3,認知したらどうなる?

父の戸籍に認知した事実が記録されます。 そのため,既婚男性が奥さん以外の女性との間で子をもうけた場合,戸籍をみれば不貞が明らかとなります。 <結婚していない父Aと母Bの間に子Cが生まれた場合を想定> 結婚していない男女の間に生まれた子を「非嫡出子」といいます。 非嫡出子は,母の戸籍に入るため,母の戸籍において「戸籍に記載されている者」として子が記載されます。 認知しても,子は父の戸籍に入るわけではないので,父の戸籍の「戸籍に記載されている者」の欄に,子Cは記載されませんが,「身分事項」の欄に認知した事実が記載されます。   母Bの戸籍(未認知)
戸籍に記載されている者   【名】C 【生年月日】○年○月○日 【父】(空欄) 【母】B 【続柄】長男
↓ 母Bの戸籍(認知後)
戸籍に記載されている者   【名】C 【生年月日】○年○月○日 【父】A 【母】B 【続柄】長男
身分事項 出生       認知   【出生日】○年○月○日 【届出日】○年○月○日 【出生地】○○県○○市 【届出人】母
【認知日】○年○月○日 【認知者の氏名】A 【認知者の戸籍】神奈川県横浜市○町○丁目○番地 A
  父Aの戸籍(認知後)
身分事項 出生     認知 【出生日】(空欄) 【届出日】(空欄) 【出生地】(空欄) 【届出人】(空欄)
【認知日】○年○月○日 【認知した子の氏名】C 【認知した子の戸籍】神奈川県横浜市△町△丁目△番地 B
  パスポート取得のために戸籍謄本を取り寄せた場合など,家族に戸籍を見られて,認知したことが発覚してしまうのは避けたい・・・と考える方もいらっしゃるでしょう。 戸籍謄本の閲覧から,認知の事実が発覚しない方法として,本籍地を移転(転籍)することが挙げられます。転籍すると,転籍前の戸籍に記載された認知の事実は新しい戸籍には記載されないのです(ただし,従前の戸籍を見れば、認知の事実は分かります)。 親子間には扶養義務(民法877条1項)が発生するので,養育費を支払う義務が生じます。 子は,父の相続人となります(民法877条1項)。 相続手続きにおいては,出生から死亡までの戸籍が必要となるため,転籍していても,死亡後には認知の事実が明らかとなります。 奥さんや,奥さんとの間に子がいる場合,相続において紛争が生じる可能性があるため,紛争とならないように遺言書を作成されておいた方がよいでしょう。  

4,認知の方法は?

認知の方法には,「任意認知」と「強制認知」の方法があります。 「任意」という言葉のとおり,自らの意思で認知することをいいます。 任意認知の方法は,「届出」と「遺言」の二通りあります。 認知をする人(父)が生存中に行う方法で,役所にある届出用紙に必要事項を記入・押印します。 <子が生まれる前> 届出場所:母の本籍地の市町村役場に届出 必要書類:父の戸籍謄本,子の母の承諾書 <子が生まれた後> 届出場所:父または子の本籍地の市町村役場 or 届出人の所在地の市町村役場 必要書類:父と子の戸籍謄本各1通(本籍地以外で認知届を提出する場合) (子が成人している場合,子の承諾書) 遺言執行者(相続人全員の代理人として,遺言内容を実現するため必要な手続きをする人)認知届を提出すると,遺言者(父)の死亡時に認知の効力が発生します。 遺言認知をするときは、遺言執行者を定めておく必要があります。遺言執行者が定められていない場合は、相続人が家庭裁判所で遺言執行者選任の手続きをする必要があります。 <子が生まれる前> 届出場所:母の本籍地の市町村役場に届出 必要書類:遺言書の謄本,子の母の承諾書 <子が生まれた後> 届出場所:父または子の本籍地の市町村役場 or 遺言執行者の住所地の市町村役場 必要書類:遺言書の謄本 (子が成人している場合,子の承諾書)   父が任意認知をしないまたはできないときに,母や子が家庭裁判所の手続により,強制的に認知させることをいいます。 <強制認知の手続> 離婚と同じようにいきなり訴訟提起をすることはできないので,まずは調停を申立てられることになります(家事事件手続法257条,調停前置主義)。 調停において子であることを認めて合意に至った場合,家庭裁判所が必要な事実の調査(実務的にはDNA鑑定がなされることが多いです)を行ったうえで,審判をします。 調停において子であることを否定し,合意に至らなかった場合,調停不成立となり手続は終了します。自動的に審判に移行するわけではなく,母や子が訴訟提起をする必要があります。 なお,認知の申立てと同時に,養育費の請求がなされることが多いです。 <審判や訴訟で認知された場合の届出 > 届出場所:父または子の本籍地の市町村役場 or 父の所在地の市町村役場 必要書類:認知を認めた裁判の謄本とその裁判が確定したことを示す確定証明書 父と子の戸籍謄本各1通(本籍地以外で認知届を提出する場合)  

5,まとめ

認知すると,①認知の事実が戸籍に載る,②扶養義務が発生する,③認知した子が相続人となります。 認知についてお困りの際には,一度,弁護士に相談されるとよいでしょう。【ご相談の概要】 夫から突然に離婚したいと告げられた。理由について訊ねると「束縛がきつい。」とのことだった。これまで夫婦関係は円満に進んでいたので怪しいと思って調べると夫はマッチングアプリで知り合った複数の女性と肉体関係を持っていることが判明した。夫が複数の女性と関係を持っていたことにショックを受けたので、離婚しかないと考えている。離婚までの生活費もきちんともらいつつ、適切な財産分与を受け、慰謝料の支払いを受けたうえで離婚をしたい。 【受任後の対応】 婚姻費用の支払いと離婚条件を記載した受任通知を発送し、交渉を開始した。相手方は、離婚は早期にしたいが、婚姻費用の金額や養育費の金額に不服があり、提示された金額を支払うことはできない、慰謝料の金額が高額すぎるので応じられないと述べたため、婚姻費用分担調停及び離婚調停を申し立てることとした。 調停においては、婚姻費用、養育費の額を算定するにあたり、当方依頼者の年収をいくらと見るかが争点となった。当方依頼者は、当時就労していなかったので収入を0円と見るべきと当方は主張、相手方は、当方依頼者の収入をパート収入で得られるであろう金額である120万円とすべきと主張した。交渉の結果、15歳で算定表を切り替えることを条件に当方依頼者の年収を120万円と見て婚姻費用及び養育費を算定することで合意した。 財産分与は、対象財産が不動産、預貯金、証券、株式、確定拠出年金など複数あり、検討を要した。不動産は、売却金から購入時に双方両親に借り入れた金額を控除した残額について折半とした。預貯金やその他の金融資産は通常どおり、別居時を基準として折半とした。確定拠出年金について、当方は別居時の評価額を財産価値として評価すべきとし、相手方は拠出額の総額を財産価値として評価すべきとし、この点で主張が対立した。しかし、離婚慰謝料は300万円払うと述べたので、確定拠出年金については相手方主張の算定によることを合意した。 【結果】 調停により合意にいたった。その内容は、相手方は、申立人に対し、①未払い婚姻費用として約40万円を支払う、②養育費として15歳までは月10万6000円、15歳から20歳まで(20歳の時点で大学に在学していたときは22歳まで)は12万6000円を支払う、③財産分与として約1280万円を支払う、④慰謝料として300万円を支払う、⑤年金分割の割合を0.5とするというものである。 【弁護士のコメント】 いきなり離婚を告げられた場合、自分がどう動けばいいのかとても不安に感じると思います。 そのため、相手方から離婚の話が出た場合、自分には何ができるのか、何をしたらよいのかについて弁護士に相談することをお勧めします。自分には離婚するつもりがなくても、本格的に離婚の話となった場合に備えて、情報を得ておくのは重要です。 本件の依頼者は、夫から一方的に「生活費は5万円しか渡さない。」と言われていたこともあり、早々に婚姻費用分担調停と離婚調停を申し立てる必要がありました。早期に調停を申し立てたことから、相手方にプレッシャーがかかり、お話し合いに真摯に向き合う様子となっていきました。本件は、不動産の売却や複数の金融資産があり、評価額をどうするかという細かい部分での争いもあり、財産分与が多少複雑な事案でした。その複雑な財産分与について、適切に資料開示を求めた結果、相当の財産分与を受けることができました。 本件のように、財産分与が複雑な事案においては、相手方の主張が適切であるかどうか判断することが難しくなってきます。そのため、特に金融資産が多くある方の場合においては、弁護士に依頼をすることによって適切に対象財産の評価を把握することができるので、不利益を受ける可能性を減らしつつ離婚することが可能となります。